今回のお品物は象牙で作られた千手観音像になります。
写真でもわかるように数か所破損部分があります。
この千手観音像の価値は17万円になります。
ちなみにこの破損部分がなく完品であれば20万円以上の価値になっているはずです。
このように細かな彫刻品で特に観音像や草花などの細かな部分が多い彫刻品は当たり所の悪い衝撃や、経年劣化で弱くなってしまった部分は壊れやすくなってしまいます。
なぜ観音像は高額査定なのか
象牙の彫刻品、加工品は様々な題材の品物が存在します。
人物風景草花神仏など様々です。
様々な題材がある中でも神仏関係の彫刻品は特に人気のある題材です。
象牙の彫刻では縁起の良い物を彫るのが主流になっております。
七福神、龍、観音などが多く見られます。
象牙加工は中国が一番と言われておりますので中国で人気のある題材と言われるとなんとなくわかりますね。
そういった神仏関係では観音像や天女像が多いのですが、今回の千手観音のほうが高額査定になりやすいです。
理由は簡単で、かかっている手間が全然違うからです。
もちろん品物によってになるので観音像でもとても高額査定になる物もありますが、比較的シンプルな観音像が多く平均的な査定額で比べると千手観音のほうが見た目も豪華に見えますので査定額が高くなりやすいです。
写真を見てもらえればわかりますが、それぞれの手の上にある持物もしっかりと彫られています。
手などは別々のパーツになってはいますがとても手間と時間をかけた彫刻品というのが分かりますね。
この画像を見て頂くとわかりますが底面に文字が彫刻されています。
これは中国の時代の刻印で乾隆と彫刻されています。
乾隆とは中国の清の時代(1616年-1911年)の元号で1736~1795年の間に使われていた元号になります。
象牙製品に限らず焼物や骨董品類ではこういった中国の元号の彫刻が入っていると大きく査定額が上がることがあります。
この底面をみて一つ残念なのが、芯の部分を使っていないというところです。
この千手観音像は部分ごとに作成し組み合わせて作られた品物ですが、観音が座っている台部分は中身が空洞になっています。
これは底部分をみるとわかるのですが、筒状になっている象牙に蓋をしている形になります。
象牙製品は基本的に芯持と呼ばれる部分を使っているほうが重量も増えますし商品としての価値があがるのです。
一番高額査定になりやすいのが、一本物をそのまま加工して作り上げる彫刻品です。
千手観音像のように複雑な彫刻品ほど作るのが難しくなるので、もしこの千手観音像が一本物の加工品であれば倍以上の価値になっていたかもしれませんね。
破損してしまった象牙は直せる?
今回の破損は千手観音が手に持つ持物や座っている台座部分の装飾が破損しております。
それぞれの箇所に穴が開いており差し込む形で付いていたのですが、何かに引っかかって折れてしまったようです。
このような場合無理に修復はしないでください。
我々も修復箇所は接着剤の跡で分かってしまいます。
破損個所によっては同じパーツを作って差し替える方法のほうがとてもきれいに直ります。
変に接着をしてしまうとそこだけ汚くなってしまったり逆に修復ができなくなってしまう可能性も出てきます。
もし品物が破損していた場合には破損したパーツも大事に保管しておいてください。
まとめ
象牙は有機物ですので日々経年劣化していきます。
多少の変色くらいの劣化ならそこまでの問題にはなりませんが、細い部分や保管場所によっては腐食や破損してしまうこともございます。
末永く保管や管理ができるのであれば大事に使ってほしいのですが、そうでない方は是非一度鑑定や査定に出してみてはいかがでしょうか。