象牙は、昔から世界中で宝石に並ぶ高級素材として調度品やアクセサリー等に使われてきました。
象牙の希少性や優しい色合い、加工の容易さ等から高値で取引され、象が生息していない日本でも鎌倉・室町時代から象牙が使われていた記録が残っています。
ワシントン条約により、規制が強く
巨大な象に生えている象牙ですから、昔は死んだ象から採取することがほとんどだったのですが、銃器などの武器が発達するにしたがって生きた象を殺して象牙を採取するようになり、象の個体の減少が問題視されるようになりました。
そんな中1989年、象の乱獲を防止する目的でワシントン条約によって象牙の国際取引が原則禁止されました。
以降、世界的にも象牙の取引は減少の一途をたどる形となりました。
日本においては、1989年以前に輸入された象牙が数多く残っていて、規制が厳しくなる中でも象牙の取引は続いています。
しかし象牙の取引を継続している日本に対して密猟を助長しているなどの批判があるなど、「象牙取引=悪」的な構図が支配的になるにつれ、象牙自体の取引数も減少して相場も下がっているというのが現状です。
弊社でも最盛期に比べると象牙の買い取り件数は減っていますが、象牙を所有されている方がまだまだいらっしゃるようで、コンスタントに買い取りをさせていただいております。
登録票
象牙の売買をする際、日本国内では「一般財団法人自然環境研究センター」の「国際希少種登録」をしなければなりません。
この制度は、平成5年4月1日に施行された「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」によって定められたものですが、平成5年4月1日以前に象牙を取得した人も新たに譲渡等を行う際には国際希少種登録をし、登録証明書である「国際希少野生動植物種登録票」の発行が必須になります。
登録票の発行には
1.象牙が本物である事。
2.象牙が合法的に取得された物である事。
3.象牙が牙の形状を保っている事。
以上3点全ての要件が整っている事が必要になります。
この3点の中で一番難しいのは、象牙の真贋判定です。
象牙の偽物も存在
象牙は昔から高価であったため、多くの偽物が出回っています。
数十年の間、自宅の床の間に飾っていた「象牙」が実は偽物だったという事も珍しくありません。
ですが、象牙の真贋判定は非常に難しい事があります。
一般的に象牙の真贋を確認する際には象牙特有の模様を確認する事が多くのサイト等で謳われていますが、個体差が大きく表面の模様を確認できない象牙もあります。
また非常に精巧な偽物も出回っているため、私共鑑定士であっても真贋判定に時間を要す事もあります。
時間と費用をかけて登録した象牙が実は偽物だったという事がないようにするためにも、象牙の真贋判定は必ずプロに依頼する事をお勧めします。
真贋の確認ができましたら、取得経緯を記載して、牙の状態を保っている事が確認できる写真を数枚添付して申請する形になります。
象牙の全形と先端部分、根元の空洞になっている部分の3枚程度の写真を添付する事が多いです。
登録の費用は5,000円となっています。(2018年10月現在)
登録に要する期間は、概ね1か月~2か月くらいかと思います。
詳細は、「一般財団法人自然環境研究センター」のホームページ(https://www.jwrc.or.jp/service/cites/regist/kikan/index.htm)にございますので確認をお願いいたします。
登録をせずに売買などの取引をした場合、2018年10月現在の法律では個人で「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」、法人で「1億円以下の罰金」となっています。
罰則規定はどんどん強化される流れになっていて、今後これ以上の罰則規定になる可能性もあります。
もし過去に親族の誰かが象牙を購入した等の理由で象牙を所有している場合、早めに登録される事をお勧めします。
象牙を売却するにあたって
また、象牙の買い取り業務につきましては古物業の許可だけでなく「特別国際種事業者」として登録されている事が条件となります。
通常のリサイクルショップや貴金属買い取り店等では象牙自体の買い取りを行えない事業者もいますので、買い取りをご希望の際には「特別国際種事業者」として登録されているかどうかを必ず確認するようにしてください。
もちろん弊社は登録事業者になりますので、安心してお問い合わせいただければ幸いです。
弊社で象牙の買い取りをさせていただく際には、大きさや形状、色、腐食等がないかの状態確認をさせていただき最終的に査定金額をご連絡させていただいております。
とある町で、数十年前にお客様のおじい様が購入し、納屋の隅に数十年間放置されていた埃まみれの象牙を見た事があります。
その象牙は長さが1mほどだったのですが、農機具等と一緒に置かれていたためぶつかってキズが多く、汚れによって色も黄ばんでしまっていました。
「もったいない」の一言につきる状態だったので、査定額アップのためにもしっかりと保管される事をお勧めします。
象牙を売却される上で大事なのは、良い状態を保つ事と「売却するタイミング」が重要になります。
世界的に見ると、高級品や嗜好品などに使われていた動物由来の品物が乱獲防止の観点から使われなくなってきています。
代表的な物が毛皮と象牙です。
一時期は海外セレブ等が好んで着用し、日本でもセレブの証のような存在であった毛皮のコートですが、現在は殆ど見かけなくなってしまいました。
毛皮のコートを作るために多くの希少な動物が殺された為です。
象牙も、また同じように象牙の品物を持っている事自体が悪い事のような風向きになってきています。
イギリス王室が数百年間にわたって収集された象牙の調度品数千点を焼却してしまった事はニュースにもなっていましたし、すでに国際取引が禁止されている象牙自体を国内でも流通させているのは日本と中国だけです。
その中国でさえ国内取引の規制に動くという話になっている中、日本国内でも象牙自体の売買や譲渡が禁止されるという事も十分に可能性があります。
国内取引自体が禁止されれば、弊社としても象牙の買い取りはできませんし、象牙自体の価値がなくなりゴミ同然となってしまいます。
象牙自体の需要がなくなっているので、象牙の買い取り価格も年々下がっています。
もし象牙の売却をお考えでしたら、できるだけ早く登録を済ませ売却される事を強くお勧めします。