2014年、日本の小笠原諸島や伊豆諸島周辺の海域で中国の漁船団による大規模な宝石珊瑚の密漁事件が発生しました。
経済発展によって生まれた中国の富裕層の間で珊瑚の人気が高まり、中国国内で珊瑚の価格が高騰したためです。
中国国内では珊瑚の原木が億を超えた金額で取引される事もあるらしいので、「一攫千金」「人生逆転」を狙ってリスクを冒してまで数千キロ離れた日本の海域までやってくるのです。
では、なぜ珊瑚はこんなに高いのでしょうか?
赤珊瑚ってどんな珊瑚
珊瑚と呼ばれるものは、大きく2種類に分ける事ができます。
1つは、沖縄等の南の島のビーチリゾートの浅い海で魚が集う珊瑚礁を形成する造礁珊瑚です。
もう1つは、単体で生息する非造礁珊瑚です。
宝石珊瑚と呼ばれる赤珊瑚は非造礁珊瑚に属します。
非造礁珊瑚に属する赤珊瑚は、私達がビーチで普段目にする珊瑚とは全く違う種類の珊瑚という事になります。
赤珊瑚の生息場所
珊瑚の生息場所は生きるエネルギーをどういう方法で賄っているかで決まります。
珊瑚礁を形作る造礁珊瑚は、褐虫藻という藻が光合成によって作るエネルギーによって生きているので、必然的に太陽光が届く浅い海に生息する事になります。
しかし赤珊瑚のような非造礁珊瑚は褐虫藻を飼っていないので、自身の触手で捕食活動を行いエネルギーを賄っています。
赤珊瑚等の非造礁珊瑚は、褐虫藻のエネルギーに頼る必要がないので、太陽光が届く浅い海に生息する必要がなく、100メートル~数百メートルの比較的深い海底に生息しています。
赤珊瑚の成長スピード
赤珊瑚は年に数mm~1cmと言われています。
ある研究機関が沖縄のモモイロサンゴの骨軸横断面の半径あたりの成長スピード(要は幹が太くなるスピード)を科学的に検証したところ、1年で成長する長さは0.15mmという研究結果もあるくらいです。
年に半径が0.15mm太くなるという事は、根本が数cmの原木に成長するまでには数十年の年月が必要となる計算になります。
仮に根本の太さが直径2cmだったとすると、その赤珊瑚は少なくとも60歳以上の珊瑚という事になるのですから、気の遠くなるような時間をかけて赤珊瑚は成長するという事がわかります。
赤珊瑚の色
珊瑚を形成する主成分は炭酸カルシウムですから、もともとの色は白になります。
では、赤珊瑚は何故赤いのでしょうか?
それは、赤い色素を持ったプランクトンを食べているからです。
珊瑚は自身で石灰質を分泌して少しずつ大きくなっていくのですが、分泌する石灰質に捕食したプランクトンの赤い色素が混じってどんどん自身も赤くなっていきます。
これは、カニやエビが赤い殻をまとっているのと同じ原理になります。
ですから、血赤珊瑚と呼ばれる赤珊瑚は、より多くのプランクトンを捕食した優秀な珊瑚という事になります。